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PCから、任意のコマンドを測定器へ送る、測定器からPCへ返り値を返すため、PCと測定器を接続するためのインターフェースカードや、ケーブル類が必要となります。 

まず、お使いになる測定器に、どのインターフェースが搭載されているのかご確認を頂く必要があります。これは、測定器のマニュアルやデータシートをご覧いただくか、直接、測定器のインターフェース端子を見る事で確認できます。

現在の自動制御では、GPIB、USB、LANのいずれかのインターフェースが用いられる事が一般的で、測定器によっては、複数の制御インターフェースがサポートされています。

測定器に、複数のインターフェースが搭載されており、自由に、選択できる場合には、インターフェースの特徴を加味した上で、選択します。以下に、インターフェース選択の参考として、各インターフェースの特徴をまとめます。 

▼ GPIB ▼

GPIB (General Purpose Interface Bus)は、Hewlett Packard(弊社Keysight Technologiesは、1999年に、Hewlett Packardの計測機器部門が分離独立した会社)が、PCと測定器を接続するために、1960年代に設計したインターフェースシステムで、当初は、HPIB(Hewlett Packard Interface Bus)と呼ばれていました。その後、1975年に、IEEEにて、IEEE-488の規格番号として承認され、国際標準規格となっています。今日まで、多くの測定器メーカー、測定器に採用され、測定器のデファクトスタンダード・インターフェース・バスとなっています。以下、GPIBの特徴をまとめます。

● GPIB

[特徴]

  • 特に測定器の通信と制御のために設計され、IEEEで規格化されたパラレル・インターフェース・バス
  • 最大ケーブル長 20m もしくは 2(×機器数)m。 機器間の最大ケーブル長 4m
  • 一つのバスに、最大で14台の測定器に接続可能
  • スター接続、ディジーチェイン接続に対応
  • 高い信頼性(ノイズ性能、三線式ハンドシェイクetc)
  • 理論上は1MByte/秒(8Mbit/秒)
  • 接続が容易。GPIBコネクタを測定器の端子に接続し、ねじ止めするだけ

[デメリット]

  • GPIBのケーブルやコネクタは、大型でかさばる
  • GPIBカード、ケーブルは、別途購入が必要で、価格が高い

[注意]

GPIBを使う際には、測定器のGPIBアドレスが重複していないことに気を付けてください。よくある事としては、他の箇所から測定器を持ってきて接続したら、同じアドレスが割り振られている測定器が既にあり、重複してしまうことや、制御用のPCに割り当てられているアドレスと同じアドレスを測定器に割り振ってしまった等です。同一バス内に、同じアドレスの測定器が存在する場合、通信ができなくなります。

また、GPIBケーブルの長さにも、注意を払って下さい。GPIBは、機器間の最大ケーブル長が4m、全体のシステムでも最大ケーブル長 20m or 2(×機器数)mに制限されています。ケーブル長を越して、測定器を接続すると、通信が出来なくなる恐れがあります。また、転送速度が遅くなることがあり、機器間も、なるべく、4mより短い長さで接続する事をお勧めします。

[選択のポイント]

GPIBは、利点である信頼性の高さや、耐ノイズ性能が大きなメリットです。また、GPIBで構築されている旧来のシステムに増設する場合など、新たな投資が必要ない時は、GPIBを選択すると良いでしょう。

なお、GPIB端子のみが測定器でも、USB-GPIB変換ケーブルやLAN GPIB Gate Way(LAN-GPIB変換)を使えば、USBやLANに変換する事もできます。 

 

▼ USB ▼

USBは、RS-232シリアル・インタフェースやセントロニクス・パラレル・インタフェースに代わるものとして開発されました。現在では、LANと同様、PCで、最も一般的なインターフェースバスの一つです。USB1.1では、12Mbit/秒の最大転送速度、USB2.0では480Mbit/秒の最大転送速度が可能であり、USB2.0は、USB1.1に対して完全に下位互換となっています。接続は、非常に簡単で、USBケーブルを、機器に接続するだけです。

測定器に関しては、ここ10年で、USBに対応する機器が多くなっており、USBを使った制御環境が整えやすくなっています。

● USB

[特徴]

  • どのPCにも付いている一般的なインターフェース
  • 接続は最も簡単。基本はUSBケーブルを接続するだけ。IPアドレス等の知識も不要
  • USBケーブルを用意するだけで、測定ができるため、お金が掛からない
  • 最大127台の機器接続。理論上の通信速度はUSB1.1で12Mbit/秒、USB2.0で480Mbit/秒

[デメリット]

  • 比較的新しい測定器にしか付いていない
  • USBの端子には、ケーブル抜けを防止するラッチが付いておらず、引っ張ると抜けてしまう事がある
  • ケーブルを挿すと、PCが自動認識するが、事前に、PCにUSB測定器用のドライバをインストールしておく必要がある
  • USBの規格上の最大ケーブル長は5m。それ以上は、USBハブを使う必要がある(USBハブは最大5段まで)

[注意]

USBは、最大5段のハブで、127台までのデバイス機器を接続することができますが、USBハブを用いて接続する場合には、セルフパワードハブを使用する事をお勧めします。USBでは、規格上、ホストが供給する電源の容量が決まっていますが、中には、数多くのデバイスを接続した場合、規格で決められた容量を提供できないものがあります。このような場合には、セルフパワードハブを使い、容量を補う必要があります。

[選択のポイント]

USBは、PCの標準インターフェースであり、インターフェースの入手にコストは掛かりません。また、インターフェースの知識も必要なく、測定器とPCをUSBケーブルで接続するだけであり、非常に手軽です。 

▼ LAN ▼

LANとは、Local Area Networkの略で、一般的には、ケーブル、無線などを使って、同じ施設内あるコンピュータや通信機器、プリンタなどを接続し、データをやり取りするコンピュータネットワークのことです。

測定器業界では、LANが、ここ10年の間に、測定器の制御インターフェースバスとして導入され、対応する測定器が増えています。LANは、一般に10Mbit/秒~100Mbit/秒の通信速度をサポートし、最高1000Mbit/秒で動作するものもあります。

LANの最大の特徴は、GPIBのデメリットであった距離や台数制限の制約から解放され、自由なバス構築が可能なことです。LANを使えば、自分の部署の測定器だけではなく、他の部署、更に、インターネットを通じて、他のサイトにある測定器の制御も可能になります。

● LAN

[特徴]

  • どのPCにも付いている一般的なインターフェース
  • LANケーブルを用意するだけで、測定ができるため、お金が掛からない
  • 理論上の通信速度は、10Mbit/秒から100Mbit/秒、1Gbit/秒、…
  • PCと測定器との距離を離し、遠隔からの制御が実現できる
  • 制御する測定器の数に制限はない
  • 複数のPCから単一の測定器を共有して利用できる

[デメリット]

  • 比較的新しい測定器にしか付いていない
  • 接続にはネットワークの知識が必要
  • GPIBのみが付属している測定器には、LAN/GPIB Gatewayが必要
  • Windows対応の測定器であれば、ファイヤウォールやセキュリティソフトの検討が必要

[選択のポイント]

LANもUSB同様に、一般的なPCのインターフェースであるため、ケーブルなどの機材は入手しやすく、手軽に構築する事ができます。しかし、接続には、IPアドレスなどのある程度のネットワークの知識が必要であり、また、Windows測定器であれば、不正アクセスやウィルスに警戒する必要があります。USBに比べて、一段敷居が高くなっています。遠隔地からの操作や、複数のPCからアクセスしたい場合など、その利点を生かせる場合には、LANを活用すると良いでしょう。
 


               図  LAN接続の例
 

▼ 実際のデータレート ▼

LAN、USBをインターフェースとして、考えた場合、気になるのは、データの転送速度ではないでしょうか。確かに、USB 2.0は、最大480Mbit/秒の転送速度と非常に高速です、一方、GPIBは、1MByte/秒(8Mbit/秒)の転送速度です。この両者には、60倍もの転送速度の差がついています。しかし、そこまでの速度差は出るのでしょうか?答えは、かならずしもYesとは言えません。

以下は、データサイズに対する転送時間を、GPIB、USB 1.1、USB2.0、LANの各インターフェースで比較したものです。Keysight Technologies社の33220A ファンクションジェネレーターに対して、PCより、データサイズの異なる各コマンドを投げて、計測しています。

 
           図   Keysight社33220Aでの転送時間
 

この結果は、非常に面白いと言えます。ファンクションや周波数の変更など、数百バイトの小さなデータサイズでは、バスの転送時間に、大きな違いは見られません。しかし、データサイズが大きいと、高速なバス(USB2.0、LAN)では、転送時間が格段に速くなる事がわかります。

USB2.0 480Mbit/秒などのデータ転送速度の仕様は、インターフェース自体の理論的な最大速度を示しているに過ぎません。実際の転送速度は、インターフェース自体が持つ転送速度の他、いろいろな要因に依存します。例えば、制御に用いるPCのCPUの速度、PCソフトウェアやドライバ、インターフェースカード、測定器固有のハードウェアやファームウェア、測定器のコマンド解釈時間や、実際に測定にかかる時間などです。小さなデータサイズのやり取りでは、インターフェースが持つ転送時間以外の要因にかかる時間が大きく、インターフェースの転送速度の影響が相対的に小さいために、顕著な時間差が現れませんでした。しかし、データサイズが大きくなるにつれ、インターフェースの転送速度の影響が大きくなるために、時間差が顕著になります。

オシロスコープやスペクトラム・アナライザなどで大量に取得した波形を転送する場合には、USBやLANは非常に有利と言えますが、単に測定した電圧などの測定値のみを取り出す場合には、USB,LAN,GPIBでは、その差が現れなくなります。

転送速度の差だけを見るのではなく、インターフェースの他の部分のメリット、デメリットを考慮し、インターフェースを選択することが必要です。 

▼ インターフェース選択のまとめ ▼

以下に、インターフェース選択をまとめます。

GPIBは、長きにわたって計測器の一般的な制御インターフェースであり、従来からのシステムとの互換性や、信頼性の高さを考える場合には、GPIBを選択することは賢い選択肢の一つです。しかしながら、PCでは一般的ではないインターフェースであるために、拡張カードやGPIBケーブルなどのコストが掛かります。また、PCとの距離や接続台数に制限があります。

USBは、一般的なインターフェースであるため、どのPCに標準で搭載されており、GPIBやLANのように専門的な知識は必要としません。測定器とPCをUSBケーブルで接続して頂くだけで使え、コストも抑えられます。更に、高速のインターフェースであるために、大量のデータを送受信される場合に向いています。しかし、USBは、比較的新しい測定器にしか普及しておらず、少し古い測定器には、GPIBしか搭載されていない場合が多いです。この場合は、下記のようなGPIB(測定器側)を、USB(PC側)に変換するアダプタを使う事をお勧めします。価格は6万円程度です。


図  Keysight Technologies社製82357 USB-GPIB変換アダプタ

LANは、低価格であること、転送速度に利点があります。更に、離れた場所からの制御ができるのは、LANだけの大きな魅力です。ただし、セッツアップには、ネットワーク知識が必要になります。


            図  インターフェース比較まとめ

 

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