Genesys Harbec Simulation

高性能な非線形アクティブ回路のデザイン

Genesys Harbecは、ハーモニック・バランス解析手法に基づいた周波数ドメインのノンリニア・シミュレータです。パワーアンプ、ミキサ、発振器などの非線形回路の解析と最適化にきわめて便利です。このシミュレータは、回路のすべてのノードでの定常状態パワー、電圧、電流スペクトラムを計算し、SPICEよりもはるかに高速に、増幅器の利得圧縮、3次インターセプト(TOI)、ミキサ変換利得、発振器位相雑音などの非線形RF性能仕様の解析を広いダイナミック・レンジで実行できます。

Genesys Harbecで使用する非線形回路は、業界標準のSPICEまたはVerilog-A非線形デバイス・モデル、集中定数コンポーネント、正確な周波数ドメイン物理モデル、Sパラメータ測定、電磁界結果を組み合わせて作成できます。

また、Harbecはリニア・シミュレータの制限を超えて、バイアス依存性、高調波歪みなど、下の表に示すさまざまな効果を考慮した信頼性の高いデザインを実現します。Genesysライブラリに存在する数千種類の非線形デバイス・モデルと組み合わせて使用することにより、Harbecは非線形デザインの問題を予測して解決する強力な手段となります。

アプリケーション 非線形効果 代表的な定常状態測定
低雑音増幅器 バイアス依存性(バッテリ寿命) 電圧、電流、パワー高調波/スペクトラム
パワーアンプ パワー依存性(圧縮または飽和) 定常状態波形
パワー付加効率
圧縮曲線
パワー等高線
3次インターセプト(TOI)
高調波歪み
ミキサ 温度依存性
周波数変換
DC消費電流
変換利得
変換効率
変換雑音指数
LO-RF-IFアイソレーション
相互変調
イメージ除去
発振器 負荷依存性
信号純度
位相雑音
DC-RF効率
発振器周波数スペクトラム
位相雑音スペクトラム
レシーバ ノイズ・ミキシングおよび周波数変換 飽和パワー
感度
ダイナミック・レンジ
雑音指数
トランスミッタ 周波数変換 AM-PM
利得圧縮
効率
ディテクタ デバイス・バイアス 大信号S11
周波数逓倍器 周波数変換 2トーン歪み、IP3
信号アイソレーション
アクティブ・スイッチ、アッテネータ、サーキュレータ デバイス・バイアス 変換利得
信号アイソレーション
アクティブ・バイアス補正 デバイス・バイアス 効率

Genesys Harbec Simulation

Genesys Harbecの詳細

Genesys Harbec(ハーモニック・バランス)シミュレータは、高い精度、収束性、速度を目標に設計されています。リアルタイム・チューニングから、インテリジェントな収束手法の応用、電磁界コ・シミュレーションまで、Harbecの強力なDC/ハーモニック・バランス・ノンリニア・シミュレーション/最適化機能は、Genesysのリニア小信号解析、電磁界解析、物理デザイン・ツールなどの既存の強力なツールを補完する役割をします。

ハーモニック・バランスとは

ハーモニック・バランスという名前はシミュレーション手法からきています。この手法は、コンピュータが回路中を伝搬するすべての高調波信号の振幅と位相を、キルヒホッフの電流則に従ってすべてのノードでその和が0になるまで反復的に調整するものです。この条件が満たされると、「ハーモニック・バランス」(高調波の均衡)が達成され、非線形回路の解が得られたことになります。

高調波信号は、周波数ドメインで表された回路中の信号の複素フーリエ係数です。例えば、1 kHzの方形波信号には、1 kHzの基本波トーンの倍数である多くの高次高調波が含まれています。このような高調波がトランジスタなどの非線形デバイスに入ると、さらに多くの基本波トーンの高調波が発生します。回路の非線形性が高いほど、より多くの高調波が含まれるため、計算のプロセスで「ハーモニック・バランス」を達成するためにより多くのメモリと時間が必要です。

さらに複雑な例として、複数の基本波トーンが入力され、周波数ミキシングが生じる場合は、シミュレータが「ハーモニック・バランス」の収束に達するために、さらに多くの高調波を処理する必要があります。このためにHarbecでは、最小のメモリ量で最も速く収束に達することを目指して、高度な数学的アルゴリズムが開発されています。

マルチトーン・ハーモニック・バランス・ノンリニア解析/最適化

デザイナは、任意の数の周波数トーンを解析対象として指定できます。メモリと時間が許せば、どのような複雑なスペクトラムでも解析して最適化できます。

Harbec Supports Fundamental Tones

Genesys Harbec

Genesys Harbec

DC解析および最適化

RFおよび無線エンジニアは、バイアス電圧の変化がデザインの応答に与える影響を知る必要があります。Harbecを使用すれば、バイアスを調整して、ほぼ即座に回路の動作への影響を表示できます。また、最適化エンジンを使用することにより、最高の性能が得られる電圧を見つけることもできます。

リアルタイム・チューニング

Harbecは高速処理に最適化されていて、多くの回路に対してリアルタイムのチューニングが可能です。デザイナは回路に生じる影響をすばやく評価し、マウスまたはキーボードを使用して微調整を行えます。コンポーネント値を調整すると、増幅器歪みのグラフがリアルタイムで更新されます。このシミュレーションでは、パッシブ整合構造の正確な電磁界解析の結果が使用されます。

Momentum GXF電磁界シミュレータとのコ・シミュレーション

分布定数コンポーネントの電磁界レベルで正確なモデリングを使用して、回路の非線形性能をシミュレートできます。ハーモニック・バランスと電磁界シミュレーションのコ・シミュレーションが初めて可能になったのです。これにより、電磁界シミュレーションの精度と、非線形シミュレーションの一般性を両立できます。

Genesysを使用すれば、電磁界と回路のコ・シミュレーションをほとんど意識せずに行えます。外部電磁界ポートをレイアウトに追加して、シミュレーションを実行します。Genesysは自動的に集中定数コンポーネントを認識して取り除き、内部ポートを追加し、電磁界シミュレーションを実行します。得られたマルチポート・データは、回路理論シミュレーションに自動的に反映されます。最初のデザインが完成したら、集中定数コンポーネントを対話的にチューニングするか、高速で自動的に最適化できます。Harbecを追加することで、集中定数コンポーネントを含む非線形回路の検証を、面倒なデータ転送なしで実行できます。すべてのシミュレータが1つの環境に統合されているので、すべてのデータを1つのワークスペースで容易に管理できます。

インテリジェント収束による非線形性能の最適化

実用的なアプリケーション向けの便利な機能の他に、Harbecには最新の収束テクノロジーが採用されていて、正確な解析を最小限のメモリで実現します。1次元およびn次元のFFTと直交APFT、および疎行列システムと非疎行列システムに対する直接法により、最小のメモリ消費ですばやく収束を達成するとともに、フーリエ変換のノイズなどのエリアジング効果を排除できます。メモリが制限されているときに多数の周波数を持つ大規模な回路を解析するには、Krylovの部分空間法が使用されます。

ただし、Harbecの最も重要な新技術は、アダプティブ・インテリジェント収束手法の採用です。これは、非線形シミュレーション問題を解くのに使用できるさまざまな手法の中から、最善の収束戦略を見つけ出して使用するものです。ソフトウェアは、電源レベル、信号レベル、スペクトラム・トーン数、さらにはデバイスの非線形性をインテリジェントに調整して、収束解を得ます。Harbecは、与えられた回路に対する最高速の計算法を探索して学習し、その後の掃引解析や非線形最適化に使用します。

非線形デバイスの自動線形化

同じスケマティック上の非線形コンポーネントと線形(Sパラメータ)コンポーネントのシミュレーションを容易にするために、Harbecは回路に対してDC解析を実行し、非線形デバイスを線形化します。得られた線形モデルがSパラメータ・シミュレーションに使用されます。これで、バイアスを調整することにより、Sパラメータ性能を改善し、バイアスによる統計的性能の変化を調べることができるようになります。リニア/ノンリニア・シミュレーションが容易になることに加えて、自動線形化により、非線形モデル・パラメータを検証/最適化して、測定したSパラメータを非線形モデリング・アプリケーションに容易に適合させることができます。

使用可能な信号と信号源

現実的な信号を作成するため、さまざまな種類の信号を回路に印加できます。信号源のすべての周波数に対して基本波周波数を見つける作業は、Harbecが自動的に行います。標準の単一周波数電圧源、電流源、電源の他に、Harbecでは、パルス、周期的な区分線形、その他のユーザ定義信号源が使用できます。

使用可能なモデル

Harbecには、25社以上のメーカのパーツのための6,000種類以上の非線形モデルが付属しています。さまざまな種類のディスクリートBJT、MESFET、MOSFET、ダイオードが使用できます。付属のRF/マイクロ波デバイスの他に、ほぼすべてのSPICEモデルとVerilog-AモデルをHarbecにインポートしてノンリニア・シミュレーションに使用できます。

SPICEモデルとVerilog-Aモデルのインポート

アナログ・シミュレーションの分野での昔からの業界標準であるSPICEネットリストやVerilog-Aビヘイビア・モデルは、何千ものモデルや回路の開発に使用されてきました。HarbecはほとんどのSPICEエレメントをサポートし、回路ネットリストを直接使用できます。この機能により、Webや文献に記載されているさまざまな回路モデルを利用できます。

Genesys Harbecの入手方法

Genesys Harbecは、Circuit機能ブロックを含む次の4つのGenesysバンドルに付属しています。

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