何をお探しですか?
周波数カウンタで正確な測定をするためのヒント
今日の周波数カウンタは正確な測定を簡単に実行できるようになっていますが、周波数測定のさまざまな落とし穴を避けるために多少の注意は必要です。以下に示すのは、周波数カウンタで正確な周波数測定をするための6つのヒントです。
ヒント1: 適切なアーミング・モードを選択すること
測定をすばやく実行したい場合には、周波数カウンタの自動アーミング・モードを使用するのが最も簡単です。しかし、代表的な4つのアーミング・モード(自動、外部、時間、桁)のうち、自動モードは確度が最も劣ります。外部、時間、桁のいずれかのアーミング・モードを使ってゲート時間を長くすることにより、下の式に示すように、測定誤差の成分であるRMS分解能と系統不確かさを改善できます。
測定誤差=系統不確かさ±シグマ*RMS分解能
シグマ=信頼度ファクタ(2シグマ、3シグマなど)
ヒント2:確度を上げるにはカウンタのタイムベースを温めておくこと

精密周波数カウンタの大部分は、温度補正周波数発振器(TCXO)またはオーブン制御周波数発振器(OCXO)を使用しています。周波数発振器を常に動作させておくことで、リトレースと出力周波数のシフトというタイミング誤差を防ぐことができます。短時間でも発振器をオフにすると、発振器が安定した周波数に達するまでにパワーオン時の変動サイクル(リトレース)が生じます。Keysight RF&ユニバーサル周波数カウンターの場合、電源プラグを抜かない限り実際にはオフになりません。機器の電源をオンにするたびに発振が生じるのを避けるため、「スタンバイ・モード」になります。発振器の動作を安定させるため、カウンタは電源プラグを抜く必要がない場所に設置し、オン状態とスタンバイ・モードだけで使用するようにしてください。タイムベースの校正の際には、カウンタの電源を抜かなくて済むように、校正機器のほうをカウンタの近くに持ってくるようにしてください。短時間でもカウンタの電源を抜いた場合、エージング・レートは再び1日のエージング・レートから始まります。
図1. グラフA、B、C: 3つのよく似た発振器が全く異なるターンオン特性を持つことを示します。グラフA、D: 同じ発振器が異なるターンオン(リトレース)特性を持つことを示します。グラフE、F: OCXOの改善されたターンオン安定度を示します。
Keysightオプション012超高安定度オーブンの最初の90日のエージング・レート:
1E-10 *30日 + 3E-9 * 2ヶ月 = 9E-9
最初の1年のエージング・レート:
1E-10 *30日 + 3E-9 * 11ヶ月 = 3.6E-8
2年目(調整なし)のエージング・レート:
1E-10 *30日 + 3E-9 * 11ヶ月 + 2E-8*1年 = 5.6E-8
最初の1年の終わりに、タイムベースの電源を落とさずに調整を行った場合、最初の1日あたりと1ヶ月あたりの仕様は該当しません。最初の90日間では、タイムベースのエージング・レートは2E-8*0.25年 = 5E-9となります。最初の1年のエージング・レートは2E-8*1年 = 2E-8となります。タイムベースの電源をオンにし続けることにより、1年の仕様が1桁改善されます。
| 最初のターンオンの後調整なし | 1年間オンにして再調整した後のエージング・レート | |
|---|---|---|
| + 90日 | 9E-9 | 5E-9(1.8倍の改善) |
| + 1年 | 3.6E-8 | 2E-8(18倍の改善) |
| + 2年 | 5.6E-8 | 4E-8(14倍の改善) |
表1. 1年の連続動作の後では、タイムベースはきわめて安定になります。1年後に電源を落とさずに周波数カウンタを再調整することにより、さらに安定度を高めることができます。
Keysightカウンタの場合、オプションのタイムベースの方が標準のタイムベースよりも高い性能を示します。その理由の1つは、オーブンを内蔵しているからです。周波数カウンタを通風のない場所に置き、温度変化を防ぐことによっても、安定度は改善されます。
注)エージングレート起算日は電源を投入してから「30日後」となります。
ヒント3: 高い精度を得るには最善のタイムベースで頻繁に校正
タイムベースの品質と校正の頻度は、測定確度に影響します。ほとんどのアプリケーションでは、確度、タイムベース品質、校正間隔の間にトレードオフがあります。高品質のタイムベースを購入すれば、校正間隔を伸ばすことができます。校正を頻繁に実行すれば、安価なタイムベースでも確度要件を満たせる可能性があります。上記の例では、校正間隔を90日にすれば、エージング・ファクタが5E-9を超えないことを保証できます(最初の1年のあと)。
タイムベースは周波数カウンタ内部になくてもかまいません。カウンタ外部の精密信号源や社内標準を使って、測定確度を改善することができます。
ヒント4: 雑音の多い信号の場合、トリガ・エラーに注意すること
確度の低い測定で十分な場合に、トリガ・エラーの影響を無視することが多くあります。トリガ・エラーとは、測定器の入力増幅器のRMS雑音と、測定器の帯域幅内の入力信号のRMS雑音です。例えば、225MHzのカウンタには100kHzのローパス・フィルタが内蔵されている場合があります。低周波信号を測定する場合、帯域幅を制限することで高周波雑音は除去されます。雑音の多い信号では、トリガ・エラーの影響が増大し、無視できなくなる場合があります。
カウンタの帯域幅内にある信号源からの雑音を評価するにはどうしたらよいでしょうか。1つの方法は、スペクトラム・アナライザを使って目的の信号と雑音とを測定することです。スペクトラム・アナライザのIF帯域幅は周波数カウンタよりもずっと狭いため、スペクトラム・アナライザによる雑音測定値はカウンタの帯域幅に合わせて調整する必要があります。
例えば、10MHzの信号を帯域幅225MHzのカウンタで測定するとします。この10MHzの信号をIF帯域幅が10kHzのスペクトラム・アナライザで測定して、10MHz信号源からの雑音がフラットで基本波より60dB下、すなわち-70dBmであったとします。50Ωに対する-70dBmは、約70μVrmsに相当します。これなら雑音は無視できると思われるかもしれません。しかし、この10MHz信号源をカウンタにつなぐと、測定値に雑音が見られます。なぜでしょうか。周波数カウンタはタイム・ドメインの測定器であるのに対して、スペクトラム・アナライザは周波数ドメインであり、カウンタ入力はその帯域幅内のすべてのスペクトル成分を積分したものを受け取るからです。
10 log(225 MHz / 12 kHz) = 42.73 dB
このように、225MHz内の雑音は-67.5 + 42.73 = -24.8 dBmで、12.9 mVrmsに相当します。これは高レベルのトリガ・エラーを生じ、測定値が一定しない原因となります。高感度カウンタの場合、この大きさの雑音があると測定値が変動します。
ヒント5: トリガ・レベル・タイミング誤差に注意すること

タイミング測定(タイム・インターバル、パルス幅、立上がり時間、立下がり時間、位相、デューティ・サイクル)を行う場合、トリガ・レベル・タイミング誤差の影響を考慮する必要があります。主な要素として、トリガ・レベル回路の分解能と確度、入力増幅器の忠実度、トリガ・ポイントでの入力信号のスルー・レート、入力ヒステリシスなどがあります。
これらの影響を減らすには、正弦波または方形波信号のオフセット値でトリガします。そうすることで、スルー・レートが最大になり、ヒステリシスの誤差が最小になります。オフセットからオフセットまで(1周期分、2つの信号の間が0位相)を測定すると、ヒステリシス・ウィンドウの影響は打ち消し合って消えます。
ほとんどのカウンタは、0Vのトリガ・レベル設定に最適化されています。53131Aと53132Aの場合、トリガ・レベル設定が0Vで、開始トリガ・ポイントと終了トリガ・ポイントのスルー・レートが一致する場合、トリガ・レベル・タイミング誤差は30mV/スルー・レートにまで低下します。
図2. 与えられた振幅に対して、正弦波のスルー・レートは周波数とともに増加することを示します。または、与えられた周波数に対してスルー・レートは振幅とともに増加します。
ヒント6: すべてのタイムベースを1つのクロックにロックすること
2つの独立したタイムベースの間のスキューやジッタは、誤差の原因となります。独立したタイムベースを使用するのは、映画を見るときに映像と音声を別々の装置で再生するようなものです。最初は映像と音声は同期しているでしょうが、時間とともに2つの間の微妙な差が明らかになってきます。今日のテスト/測定機器を使用するアプリケーションの多くでは、このスキューは無視できます。