注記:この記事は34401A、34970A、34980Aに適用されます。

NPLC (Number of Power Line Cycles) は電源サイクル数で積分時間を設定します。積分時間は、測定器のアナログ/デジタル (A/D) コンバータが入力信号を測定する時間間隔です。NPLCは、DC電圧および電流測定、2線および4線式抵抗測定、温度測定で使用されます。

NPLCコマンド

[SENSe:]VOLTage[:DC]:NPLC { |MIN|MAX|DEF} [, (@ )]
CURRent
[SENSe:]FRESistance:NPLC { |MIN|MAX|DEF} [, (@ )]
RESistance
TEMPerature

 

注記:チャネル・リストは34401Aでは使用できません。

NPLCの値:{0.02|0.2|1|2|10|20|100|200}

DC信号の値を測定する場合、電源に起因したACノイズが生じる場合が多くあります。DC信号を電源周波数のサイクル数で積分すると、このノイズを除去できます。ノイズが電源周波数 (米国で60 Hz、他の多くの国で 50 Hz) であれば、1サイクルによってノイズは除去されます。しかしノイズは均一ではなく、信号を複数のサイクルで積分しなければならない場合があります。そのサイクル数が多いほど、信号の値はより正確となります。つまりノイズ除去が大きく、分解能が高くなります。対象のアプリケーションが真/偽やハイ/ローの電圧読取りを行うだけなら、小さなノイズは大きな問題とはなりません。そのため、非常に小さなNPLCを使ってスループットを最大にできます。

電源を入れた後や*RSTコマンドの後では、NPLCパラメータは自動的に1 PLC (デフォルト) に設定されます。この値は、一般的に妥当な値です。1以上のNPLCでは読取り値は正確になりますが、速度が犠牲となります。ノイズが除去できるのは、1以上のNPLC値のみです。読取りを速くするほど、測定器はディジタイザのように動作します。図1では、0.02 PLCの20サンプリングにより、このユニットの忠実な波形が得られます (0.5V AC、60 Hzハム、5Vオフセット)。逆に言うと、1 以上のNPLCを使用すると、ACノイズの効果が除去されて5 Vの正しいDC値が得られます。

Test program results for the 34980A using the 34951A DAC card










 

図1. テスト・プログラムでは、34951 DACカードと34980Aを使用し、1 Vp-p、60 Hz、5V DCオフセットのAC電圧を作成しました。この結果はオートゼロをオフにし、それぞれのNPLC値で20回の読取りで測定された電圧を示しています。

NPLCと速度の関係はどうなるでしょうか?積分時間を短くすると、それだけ高速測定が行えます。他の設定も速度に影響を与えます。このシリーズの記事1で示したように、オートゼロをオフにすると測定速度が約2倍になります。図2を見ると、NPLC値が小さなうちはオートゼロがオフの時間は、ほんのわずかです。NPLC値が大きくなると (≧10) 時間短縮はかなり増加し、1分近くかそれ以上になります。しかし、NPLC値を大きく設定する場合は、確度を向上させるためにオートゼロをオンにすることを推奨します。

 

Graph derived from test program for 34980A using autozero ON vs. OFF for each NPLC value.










 

図2. このグラフは34980A用のテスト・プログラムによるもので、それぞれのNPLC値に対してオートゼロをオンおよびオフにして、DMMで20回の測定を行った結果です。1 Vp-p、60 Hz、5V DCオフセットのACを、DC VOLT、レンジ10、ファンクション・コールINITおよびFETCH?を使用して測定しました。

Keysight以外のDMMでは、使用する電源周波数を指定しなければならないものがあります。ある国でプログラムを作成して、それを電源周波数の異なる国で使用する場合は、そのコマンドを変更するのを忘れやすいものです。最近のKeysight DMMは自動的に電源周波数を検出して、それに従って積分時間も調整されます。なぜこれが重要なのでしょうか? もし60 Hzを設定したプログラムを書いて、それを電源周波数が50 Hzの国でDMMに適用したとします。プログラムを調整していなければ、除去できない50 HzのACノイズが現れ、不正確な測定結果になります。

積分時間はサイクルでなく、時間でも設定できます。APERTURE設定では、サイクルの長さをより詳細に制御できます。アパーチャは、DC電圧および電流測定、2線および4線式抵抗測定、また温度、周期、周波数の測定で使用されます。

アパーチャ・コマンド

[SENSe:]VOLTage[:DC]:APERture { |MIN|MAX|DEF} [, (@ )]
CURRent
[SENSe:]FREQuency:APERture { |MIN|MAX|DEF} [, (@ )]
FRESistance
RESistance
PERiod
TEMPerature

NPLCを用いて積分時間を設定する方がより一般的ですが、これは実行時間が速く、また慎重な計算が必要なアパーチャより設定が楽だからです。アパーチャ・コマンドでは4μsの分解能が可能で、300us~1sの積分時間を設定できます。しかし、設定したいはっきりとした積分時間がなければ、NPLCのほうが使用は簡単です。アパーチャ・モードを使う場合にはNPLCモードをオフにし、NPLCモードを使う場合にはアパーチャ・モードをオフにします。

積分時間と分解能は直接関係し、一方を設定すれば自動的に他方も設定されます。次の表は積分時間、測定分解能,桁数、ビット数の関係を示しています。分解能を設定した後でレンジを変更すると積分時間は変更されませんが、新しいレンジの積分時間に合わせて分解能が変更されます。また、NPLC <1に相当する分解能を設定すると [例えばCONF:VOLT:DCレンジ, 分解能, (ch_list)]、オートゼロが自動的にオフになります。

積分時間、測定分解能,桁数、ビット数の関係
積分時間  分解能  桁数  ビット数
0.02 PLC  < 0.0001 × レンジ  4 1/2 桁  15
0.2 PLC  < 0.00001 × レンジ  5 1/2 桁  18
1 PLC  < 0.000003 × レンジ  5 1/2 桁  20
2 PLC  < 0.0000022 × レンジ  6 1/2 桁  21
10 PLC  > 0.000001 × レンジ  6 1/2 桁  24
20 PLC  < 0.0000008 × レンジ  6 1/2 桁  25
100 PLC  < 0.0000003 × レンジ  6 1/2 桁  26
200 PLC  < 0.00000022 × レンジ  6 1/2 桁  26