LTE(Long-Term Evolution)は、移動体通信システム用の新しい高性能エア・インタフェースのプロジェクト名です。3GPP(Third Generation Partnership Project)によって開発されたLTEは、オールIP広帯域ネットワークに向けてユニバーサル・モバイル通信システム(UMTS)を進化させたものです。LTEの進化した無線アクセス・テクノロジー、E-UTRAは、データ・レートとシステム全体の容量の増加、遅延の低減、スペクトラム効率/セル端性能の向上を実現するためのフレームワークを提供します。これについては、3GPPリリース8およびリリース9仕様に記載されています。このLTEの概要では、LTEの特長を紹介します。

OFDMAベース:W-CDMA(広帯域コード分割多元接続)テクノロジーをベースにしたUMTSとは異なり、LTEはOFDMA(直交周波数分割多元接続)をベースにしています。ダウンリンクでは、OFDMAベースの伝送方式と多元接続方式を組み合わせて、高データ・レート容量と高スペクトラム効率が実現します。この点では、LTEは、広帯域無線アクセス用のもう1つの最新テクノロジー、Mobile WiMAX™と概念は似ていますが、これらのシステムは、さまざまなフレーム構造、サブキャリア間隔、チャネル帯域幅で動作します。

SC-FDMA(シングル・キャリア周波数分割多元接続)と呼ばれる新しいOFDMAベースの方式が、LTEアップリンク向けに開発されました。SC-FDMAでは、ピーク対アベレージ比(PAR)の低減により、移動機のバッテリ寿命を維持できます。

柔軟な変調方式:ダウンリンクはQPSK、16QAM、64QAMデータ変調方式に、アップリンクはBPSK、QPSK、8PSK、16QAMデータ変調方式にそれぞれ対応しています。

MIMO:LTEは、現時点では、20 MHzのスペクトラムごとに、100 Mbpsのダウンロード速度と50 Mbpsのアップロード速度を実現します。複数のアンテナ構成を使用することにより、さらに高速のデータ・レート(ダウンリンクで最大326.4 Mbps)に対応します。LTEは、最大4×4 MIMOのシングルユーザ・マルチ入力/マルチ出力(SU-MIMO)およびマルチユーザ・マルチ入力/マルチ出力(MU-MIMO)アンテナ構成をサポートしています。これらの構成では、3GPPの最初のW-CDMAテクノロジーの最大10倍の1セル当たりのユーザ数に対応できます。Keysightのアプリケーション・ノート『LTEの動作/測定--MIMOテストに関する抜粋』を参照してください。

 スペクトラム効率:LTEはまた、ダウンリンクとアップリンクの両方で1.4~20 MHzのスケーラブルな帯域幅を備え、マルチメディア・ブロードキャスト・マルチキャスト・サービス(MBMS)の場合で、15 kHzと7.5 kHzのサブキャリア間隔を実現します。3GPPリリース7高速パケット・アクセス(HSPA)よりも、ダウンリンクで3~4倍、アップリンクで2~3倍高いスペクトラム効率を目標にしています。小さなIPパケットで、遅延は5 ms以下です。

FDDモードとTDDモード:できる限り多くの周波数バンド割り当てに対応するために、周波数分割デュプレックス(FDD)手法と時間分割デュプレックス(TDD)手法をそれぞれ用いることにより、ペアと非ペアの両方のスペクトラム動作に対応します。ペアのスペクトラム動作はFD-LTEと呼ばれ、非ペアのスペクトラム動作はTD-LTEと呼ばれます。

従来のシステムとの共存:LTEは、パケット・ドメインのデータはもちろん、音声もサポートするように設計されています。ただし、LTEは、オールIPネットワークへと進化するに従って、3GPP HSPA、W-CDMA、UMTS、GSM/GPRS/EDGEなどの従来のシステムと共存するようになります。3GPP EPC(Evolved Packet Core)ネットワークと組み合わせれば、LTEは、パケット交換システムと回路交換システムの間のドメイン間ハンドオーバをサポートします。EPCネットワークの仕様については、SAE(System Architecture Evolution)と呼ばれる同時進行のプロジェクトで開発が進められています。

LTEの概要の詳細については、KeysightのLTEに関する無料のアプリケーション・ノート『3GPP Long Term Evolution: システムの概要、製品開発、テスト上の問題』をダウンロードしてください。

 

LTEの概要:LTEテクノロジーの開発および配備

 LTEへの取り組みは、2004年に開始されました。最初に完成したリリース8仕様は2009年3月に発表されましたが、現在では、商用開発では十分安定していると見なされています。LTE規格の開発は3GPPリリース9でも続けられており、仕様は2009年12月までに完成しています。試用運用が進行中で、2010年~2011年にはLTEの最初の配備が予定されています。

LTEは、10年間以上にわたって無線業界のニーズを満たすものと期待されています。また一方では、真の第4世代のテクノロジーに関する国際電気通信連合(ITU)のIMT-Advanced要件を満たすために、リリース10以上で定義されているLTE-Advancedの開発が3GPPで進められています。2009年10月には、LTE-AdvancedがIMT-Advancedの候補としてITUに提示されました。

 

LTEテクノロジーの概要:グローバル規格

今日のLTEは、移動体通信に関する初めての単一のグローバル規格となりつつあります。GSMとCDMAの両方のプロバイダが同じように採用を進めています。要件を十分に満たす初のテクノロジーとして、NGNM (Next Generation Mobile Networks) Allianceによって採択されました。

LTEは、以下のような団体の支持を得ています。

LSTI(LTE/SAE Trial Initiative)は、主要通信ベンダ/プロバイダの国際協力で、商用の相互運用性の高いLTEネットワークやデバイスの可用性を促進することに主眼が置れています。2009年9月、このグループは、FD-LTEとTD-LTEの両方の第1段階の概念実証が完了したことを発表し、IODT(相互運用性の開発テスト)、IOT(相互運用性テスト)、顧客による試用など、さらなる試用段階へと移行しています。http://www.lstiforum.org をご覧ください。

 

LTEテクノロジーの概要:LTEのテスト

LTEの配備に成功するかどうかは、システムのさまざまなエレメントの互換性と効果的な相互運用によって決まります。コンフォーマンス・テストでは、これらのエレメントが3GPP仕様に定義されている最低限の性能を満たしていることを確認します。LTEのコンフォーマンス・テストは、基地局、ユーザ機器、無線リソースの管理性能に及びます。LTEネットワークやユーザ機器の開発に取り組んでいる今日のベンダの主な焦点は、そこにあります。

複雑でありながら柔軟性のあるLTEエア・インタフェースは、さまざまな変調方式/周波数バンド/リソース割り当て/モビリティ・オプションをサポートしています。このため、テスト可能なRF構成の組み合わせの数が莫大になります。LTEコンフォーマンス・テスト用のRF構成を選択する中で、3GPPは、最も困難な動作条件を表すパラメータの組み合わせを発見しました。このため、製品がテストに合格した場合、そのデバイスは、その他多くのそれほど難しくないシナリオで、十分に機能する考えられます。

コンフォーマンス・テストの数が多いと思われるかもしれませんが、この他の種類のテストも必要です。例えば、コンフォーマンス・テストでは合否結果しか得られず、その製品が特定のリミット値にどの程度近いかは示されないので、性能マージンを詳細に調査することが重要です。LTEコンフォーマンス・テストは主に、ネットワークの基礎となるトランスポート・メカニズムがエンドユーザ・サービスを提供できることを確認することを目的としているため、さらに上位レベルのアプリケーションのテストが必要です。プロバイダの受入れ検査は、このプロセスのもう1つのステップで、より多くのユーザ中心のテストが含まれます。このため、コンフォーマンス・テストは、LTEの配備に向けて不可欠なステップですが、テスト・プロセスの始まりでも終わりでもありません。LTEのコンフォーマンス・テストの概要については、KeysightのLTEの概要に関するアプリケーション・ノート『3GPP Long Term Evolution: システムの概要、製品開発、テスト上の問題』を参照してください。

 

LTEの概要だけでは不十分ですか?以下をご覧ください:

  • Keysightでは、LTEテストのあらゆる側面に関するアプリケーション・ノート、ポスター、記事、トレーニングを以下のWebサイトで紹介しています:www.keysight.co.jp/find/lte
  • SAEの物理層および概要について詳細に説明した包括的なLTEの概要については、Keysightの書籍"LTE and the Evolution to 4G: Wireless Design and Measurement Challenges"を参照してください。
  • LTEの実装におけるMIMOテストについては、さまざまなアプリケーション・ノートで説明しています。
  • LTEの動作/測定--MIMOテストに関する抜粋。LTEの動作/測定--MIMOテストに関する抜粋
  • LTEテストでのMIMO性能とコンディション・ナンバー。LTEテストでのMIMO性能とコンディション・ナンバー

 

LTEの概要:Keysightのテスト・ソリューション

Keysightは、電子計測ソリューションの世界的なリーダとして、早起段階でのRF/デジタル・デザインから製品のコンフォーマンス・テスト、ネットワーク配備、サービス保証まで、ライフサイクル全体に対応するLTEの最先端のデザイン/テスト・ソリューションを提供しています。LTEテスト・ソリューションの概要については、LTEテスト機器のWebサイトをご覧ください。